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森林緑地研究の最前線

大地を診断するフィールドワーク!ー土砂災害のメカニズムに迫るー

清水収砂防学

Q. どうしてこの研究が必要なのですか?

近年大きな自然災害が相次ぎ、多くの痛ましい被害を目の当たりにしています。大雨や地震、火山噴火などの時に起こる土砂災害を防止、または出来るだけ軽減することは急務です。土砂災害を防ぐために研究しなければならないことは沢山ありますが、特に、ある土地が山崩れや土石流などを起こしやすいかどうか、人が安全に住める場所かどうか、ということを研究することが重要です。この研究は言い換えれば、土砂災害の観点からの「大地の診断」と言えます。

Q. 具体的にどのような研究を行うのですか?

土砂災害にはその地層の構造が強く関わっています。数年前の大雨で、多くの山の斜面が崩れた熊本県阿蘇地方の現場に行きました。そこは阿蘇山の火山灰が降り積もって出来た地盤からなっていて、数千年前から現在までの火山灰が数メートルの厚さで堆積しています。崩れた部分と周りの崩れなかった部分との境目の段差には、地盤の地下構造、すなわち火山灰の堆積層が観察できます。層ごとの厚さや火山灰の色、粒子の大きさを判別し、地層の性質や年代を明らかにします。また、研究室で土の性質を詳細に調べます。それらの情報と山崩れの状況を統合して考察し、崩れのメカニズムに迫ります。

Q. 最近の成果や課題を教えてください。

調査の結果、雨水の浸透性が異なる二つの火山灰層の間に水が溜まることが山崩れの原因であることが分かりました。すなわち、下層にある茶色の火山灰層(水通しが悪い)の上に水が溜まることで、上層の黒っぽい色の火山灰層が浮力を受け、両層の摩擦が小さくなって滑り落ちるのです。火山灰は広い範囲に分け隔てなく降り積もっているはずですから、この地層の組み合わせは、阿蘇山の一帯に拡がっていると考えて良いでしょう。すると今後も、大雨の時には同じパターンにより2つの火山灰層の境目から崩れると考えられます。このような地道な調査によって山崩れのメカニズムを解明することは、「大地の診断」につながり、次世代の皆さんの安全に寄与できると信じています。


大きな山崩れから流れ出した土砂が途中の木々をなぎ倒し、さらに下方にある家々を襲いました。

崩れた斜面の脇の段差で、地盤の地下構造を調べています。崩れた斜面にもこれと同じ火山灰堆積層があったはずなので、どの深さから何が崩れたかを、崩れ残ったところで調べます。

2017年1月13日