お問い合わせはこちら
森林緑地研究の最前線

健全な農地と自然を守ろう-衛星リモートセンシングを使った蒸発散量推定技術-

多炭雅博環境情報学

Q. どうしてこの研究が必要なのですか?

森林、緑地、農地などに存在するすべての植物の生長には水が必要です。植物は根から土中の水を吸収し、葉からその水を蒸散させながら生長します。地面からの水の蒸発と植物体からの水の蒸散を合わせて「蒸発散」と呼びます。湿った地表面からの蒸発散量は大きく、乾いた地表面からの蒸発散量は小さい、というように、蒸発散量を知ることで土壌の水分状態や水環境を知ることができます。農業や自然環境の保全に必要な水資源の管理や配分を考える上で、地表面からの蒸発散量は大変重要な情報です。

Q. 具体的にどのような研究を行うのですか?

私は人工衛星画像を使った蒸発散観測技術の開発と利用方法を研究しています。農業には水がたくさん必要なので、研究対象は農地であることが多いです。蒸発散量を推定する方法はいくつかありますが、例えば人工衛星画像を利用して地面の反射や温度環境を把握し、地面付近のエネルギーの流れを解析して蒸発散量を求めることができます。液体の水が気体の水蒸気に相転移する、すなわち蒸発散するためには、膨大なエネルギー(潜熱)が必要で、このエネルギーの量がわかれば蒸発散量がわかります。下図は人工衛星で宇宙から観測した農地と、その衛星画像を解析して算出した蒸発散量です。畑の水管理が適切かどうかを評価したり、地域の水需要を計算して水資源計画を立てたりするのに役立ちます。

Q. 最近の成果や課題を教えてください。

前述のようなエネルギーの流れを追って蒸発散を推定する方法は、正確ですがかなりの手間と高度な技術が必要です。そこでもっと簡単に、現場の技術者が手軽に蒸発散量を推定できる技術の開発にも取り組んでいます。農業用水の管理や持続性に問題がある途上国の技術者がこのような蒸発散推定技術を使えるようになれば、食料の生産や水管理に持続性を持たせ、自然環境を健全に保つことにも寄与できます。研究だけでなく、大学院教育を通してこのような先端技術が使える人材の育成にも取り組んでいます。


人工衛星が観測した農地(右)と、推定した蒸発散量(左)

2017年1月13日